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「光より速いニュートリノ」騒動の顛末 [物理]

 2011/9/22に「Measurement of the neutrino velocity with the OPERA detector in the CNGS beam 」という論文が発表されました。日本でも「光速を超えるニュートリノ」が発見された可能性がると大きく報道されました。あまりの反響の大きさにびびったのか再び検証を行ない「11/17付けの改訂版 」が出されました。どちらも結論は、約70nsだけニュートリノが早く到着したというものです。良く読むと、どの論文の最後にも"We deliberately do not attempt any theoretical or phenomenological interpretation of the results."と記されており、結果のみを提示して逃げ道をつくってあります。でも、マスメディアが大きく報道したこともあり、世界中が大騒ぎになったことは記憶に新しいですね。結局、測時系の不具合が原因の遅延が測定結果に影響を与えており、実験はあやまりであったと報道されました。GPS common-view方式では精度的に難しいのではないかなどの意見も出されたようです。結局、どこがどう誤りであったのか、詳しい報道がなされなかったため、すっきりしない状態でしたが、2012/03/28に(ひっそりと?)「不具合レポート 」が発表されているのを見つけました。7-8pageに弛んだコネクタの写真と波形データがありますが、1ppsを伝送している光ファイバのFCコネクタが弛んでいたせいで、受光部のフォトダイオードの容量性負荷を十分にドライブできず、チャージにかかった時間分だけ遅延が生じてしまったということのようです。引用した2つの波形データ(青の線)を比べると70ns程度遅延しているのがわかります。分かってしまえば、トホホな結果ですね。手持ちの光トランシーバで遅延を追試してみましたが、70nsもの遅延は再現できませんでした。たぶんずいぶん応答の遅い受光素子を使っていたのでしょうね。

 最初の論文を発表するときの研究者達の興奮と戸惑いは想像するに難くありません。残念な結果に終わってしまいましたが、丁寧に検証を重ねた研究者や技術者の方々には拍手を送りたい気持ちです。この実験には、日本の名古屋大学なども参加しているようです。日本の研究者の名誉のために申し添えると、この論文の発表には当初から反対であったとのこと。

 また、発表直後に別の日本の研究者が言った言葉「現代物理学の基礎は、そんなに脆弱な物ではない」が印象的でした。

 
G._Sirri.pptx1.jpg
G._Sirri.pptx2.jpg

 

追記: 疑われていたGPS common-view方式でも、電離層遅延、対流圏遅延の実装データを元に後付けの補正を行うとサブナノ秒の測定が可能であるとのことです。

 

 


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経度0の場所は旅をするか? [物理]

GMT/太陽平均時からUTC(国際原子時TAI) と UT1(世界時)になってる。GMTの時代は平均太陽の子午線通過時が基準だったけど、現在はさらに精度確度が上がっていると思われる。とはいえ、実際の地球の挙動と原子時の同期を取るために閏秒が導入されている。

ここで疑問。UTC 00:00:00が常に Longitue=0だとすると、閏秒の挿入の前後でLongitude=0の物理的な場所が移動してしまうことになる。でもそれじゃGPSなどを使用した位置情報システム的にはまずいことになる。ということは、時刻基準はUTC/TAI, 位置基準は UT1を採用ということになる。ところが、GPSなどではUTCを基準として測位していると思われる。UTCとUT1のずれが線形ならば簡単に補正できるのだろうけど、そうもいかなさそう。さて、どーやって辻褄を合わせてるんだろう?うーん。


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